下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(指定難病77)

かすいたいせいせいちょうほるもんぶんぴこうしんしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.先端巨大症、下垂体性巨人症(下垂体性成長ホルモン分泌亢進症)とは

先端巨大症は「アクロメガリー」とも呼ばれ、額、鼻、唇や下あごが大きくなる特徴的な顔貌と、手足など体の先端が肥大する病気です。思春期までに発症すると巨人症になります。頭痛や視力・視野障害、高血圧、糖尿病、いびき、多汗、関節痛、手の痺れなどの症状を伴います。しかし外見の変化はゆっくりと進むので本人や家族は気づかないことがあります。また無治療の場合やコントロールが十分ではない時には、合併症によって生命予後が悪化しますので、しっかりとした治療が必要です。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

欧米の 疫学調査 では、人口10万人あたり4-24人という報告があり比較的まれな病気です。しかし最近の報告ではより多い可能性もあり、見逃されている患者さんも少なくありません。

3. この病気はどのような人に多いのですか?

男女の差はなく、40歳代から50歳代の方に多くみられます。まれに10歳から20歳代で高身長からみつかることもあります。

4. この病気の原因はわかっているのですか?

眼の奥にある「下垂体」と呼ばれる小指の先ほどの小さな器官にできる良性の腫瘍が、成長ホルモンを過剰に分泌することがほとんどの先端巨大症の原因です。成長ホルモンは子供では成長を促し、大人では代謝を調節しているので、過剰になると上記のような症状が出ます。

5. この病気は遺伝するのですか?

ほとんどの場合、遺伝することはありません。ごく稀に 多発性内分泌腫瘍症 Ⅰ型や 家族性 下垂体腫瘍の場合、家族の中で下垂体腫瘍などがみつかることがあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか?

症状は、特徴的な手足の肥大や顔つきの変化のほかに全身にあらわれます。下記の症状がいくつか当てはまる場合、病気の疑いが強くなります。
頭痛がする・視力が下がった・視野が狭くなった・噛み合わせが悪くなった・歯並びが悪くなった・舌がからまる・声が低くなった・いびきが大きい・昼間の眠気が強い・いつも手が汗ばんでいる・両手の指先がしびれる・関節が痛む・額や目の上がとび出ている・鼻が大きくなった・唇が厚くなった・下あごが出ている・舌が大きくなった・昔の写真と顔つきが変わった・手が大きくなった(指輪が入らなくなった)・足が大きくなった(靴が入らなくなった)・生理が乱れるようになった・糖尿病や高血圧と診断されたなどです。

7. この病気にはどのような治療法がありますか?

原因である下垂体にできた腫瘍を取り除く手術を行うのが一般的です。腫瘍の大きさによりますが、鼻からアプローチする手術方法が確立されており、熟練した医師が行えば安全性の高い手術です。腫瘍が大きいために手術が難しい場合や合併症が重症で術前に改善が必要な場合、手術後もまだ血液中の成長ホルモン量が過剰な場合、通常薬物による治療を行います。それでも不十分な場合には、放射線(ガンマナイフなど)による治療を行う場合もあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか?

手術で腫瘍が完全に切除できた場合は治ることが期待出来ます。手術で治らなくても薬物療法できちんとコントロールすれば病気による悪影響を防ぐことが出来ます。適切な治療を受けずに、長期にわたって成長ホルモンの過剰分泌が続いた場合は、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを合併し、手根管症候群、変形性関節症の悪化やさらに狭心症、心筋 梗塞 、心不全、脳血管障害などを起こす危険性もあり、生命予後が悪化しますので、十分な治療を継続することが大切です。また大腸癌、甲状腺癌などを合併する可能性も高くなります。深刻な病気を引き起こさないようにするために、早期発見・早期治療が大切です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

下垂体の腫瘍だけではなく、高血圧、糖尿病などの合併症をきちんと治療することが大切です。またホルモンをコントロールするための薬物療法は長期に続けることが大切です。日常生活においては、食べ過ぎや塩分の取りすぎにならないよう気をつけましょう。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

先端巨大症、アクロメガリー、下垂体性巨人症、成長ホルモン産生下垂体腫瘍

11. この病気に関する資料・関連リンク

日本内分泌学会 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業.間脳下垂体機能障害に関する調査研究班)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/99/S.July/99_1/_article/-char/ja/

 

情報提供者
研究班名 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)